Macworld Conference & Expo SF03基調講演

Macworld Conference & Expo SF03でのApple CEOスティーブ・ジョブス氏による基調講演、すでに各メディア詳報によりご存じのことと思いますが、メモを元にまとめてみました。

壇上に立ったアップルCEO、スティーブ・ジョブス氏。

開始予定の9時を少し過ぎて始まったスティーブ・ジョブス氏のキーノートスピーチ、まずは現在行われているSwitchキャンペーンの成功、またこれまでに展開してきた直営店であるアップルリテールストアの成功が、クリスマスシーズンの販売額が1億4800万ドルに達し、そのうちの50%がWindowsからの「switchaer」であったことを紹介。

移行を押し進めているOS Xに関しても、教育現場での浸透を目指し、「Xを教師たちに」と銘打ったキャンペーンを実施し、これまでに29万人の教育者にフリーコピーを配付、本来12月までのキャンペーン期間を3月末まで延長することを発表しました。このフリーコピーは教育者向けアップルサイトからダウンロードが可能とのこと。

iアプリケーションには、まずは簡単にiCal1.0.2でのバグフィックスと、iSyncのダウンロード開始について説明があり、アップルが行っているインターネットサービス「.mac」に関しては、利用者が25万人に達したとの報告がされました。

続いてはWindowsプラットフォームでも利用が可能になったアップル製MP3プレーヤー「iPod」に話が移り、これまでに60万台を出荷、アメリカと日本ではマーケットシェア第一位を維持し、特に日本においては42%という大変高いシェアを獲得したと発表、大きな拍手に迎えられました。

iPod用アクセサリーではコンピューター以外の企業とのコラボレーションも行われていることが発表され、その例としてスノーボードの世界で有名なバートン社との共同開発製品が紹介されました。紹介されたゴアテックス素材のiPod用ジャケットは、ソフトスイッチでリモート操作が可能。価格は499ドルでUSアップルストアにて注文可能とのことです。

スノーボードで人気のブランド、バートン社とのコラボレーションによるiPodアクセサリ、「Amp iPod Jacket」。腕にはリモートコントロール用のパッドが用意され、リモート操作が可能。スノーボーダーだけではなく、タウンユースやアウトドア系の方にも?価格は$499。


Jaguarで大きな一歩を踏み出したMacOS X。OS 9からのプラットフォーム移行推移については、現時点のアクティブユーザーは5百万人(2003年内に1千万人を予測)、OS Xネイティブアプリケーションも5000に達したとの報告が。こうした移行を後押しするべく、ハードウェア購入時にマイクロソフト社オフィスの優待販売が受けられる「オフィスパーティー」キャンペーンも4月まで延長するとのことでした。

OS X用ソフトウェアとしては、QuickBooks 5.0 for Mac、NASCAR Racing 2002、Virtual PC 6、Director MXなどが紹介され、音楽製作現場から求められていたOS XネイティブアプリケーションとしてPro Tools for OS Xの今月出荷が発表に。価格は495ドル。Digidesign社、ディブ・レボルト氏が壇上に上がり、製品紹介とデモンストレーションを行いました。

Digidesign社、ディブ・レボルト氏によるPro Tools for OS Xのデモンストレーション。待望のプロフェッショナル向け音楽アプリケーションで、アナウンスされた時には、聴収からも大きな喝采が上がりました。

続いてはプロ向け映像編集ソフトウェア「Final Cut Pro」が Pro Editingの世界でナンバーワンソフトであると紹介されましたが、このセクション、実の主役は「Edit Like a Pro」をテーマに用意された新ソフトウェア「Final Cut Pro Express」に。Final Cut Pro Expressプロシューマー向けエディティングソフトウェアとしての位置付けの製品。アップル、フィル・シラー氏が壇上に上りデモを行いましたが、200のトランジッション/カラーコレクション機能など、従来のFinal Cut Pro譲りのファンクションを豊富に搭載しながら$299というリーズナブルプライスに、会場からは大きな喝采が。

Final Cut Pro Extremeを紹介する米Apple社上級副社長フィル・シラー氏。

アップルが昨年のWWDCにて明らかにしたように、OS 9環境の扱いについても少し触れられ、「今日からOS 9のブートは無し」と明言。OS XとClassicにフォーカスすることをジョブス氏自ら再確認しました。

2年前よりアップルが提唱するデジタルハブ戦略、iアプリケーションにて様々なソリューションを提供してきましたが、それぞれのアプリケーションはそれぞれのソリューションに対して、これまで独立し機能していました。ジョブス氏はデジタルライフスタイルを実現する上で、これらを有機的に機能させる必要を力説。iアプリケーション間での連携強化を図るために、各iアプリケーションのブラッシュアップを行ったと、それぞれにつきデモンストレーションが。


MP3ソフトウェア「iTunes3」は、すでに1800万のコピーが配付され、大変高い人気を得ていると紹介されましたが、バージョンアップは無し。

デジタルカメラで撮影した画像の取込み・閲覧ソフトウェア「iPhoto」は、ヴァージョンが1から2となり、早速iアプリのインテグレーション例として、iTunesとの連携でスライドショーのBGMを選択可能になったことが紹介されました。新機能としては
画像修正/色調・階調補正、ホワイトバランス調整をワンクリックで実現する「One-Click Enhance」、ヒーリングブラシで修正部をなぞるだけでスクラッチ等の修正が可能な「Retouch brush、スライドショーをムービーとしてCDやDVDに書き出すことができる「Archive to CD & DVD」などがデモンストレーションされました。

最もインテグレーションが強調されたのがムービー編集ソフト「iMovie」。こちらもバージョンが上がりiMovie3となり、iTunes、iPhoto、iDVDとの連携強化が図られています。個人的にも希望していましたが、チャプターの設定に対応。多彩でクールなムービーエフェクトを提供する「Ken Burns effects」、効果音としても「Precise Audio Effect」がデフォルトで用意され、作品製作にもかなり幅が出たのでは。


アプリケーションがフローティングウィンドウ形式となった点も、iアプリのインテグレーションを進める上では重要か?iTunes ライブラリーを呼び出し、そこから直接曲を音楽トラックへドラッグ可能とし、前出ビルトインのサウンドエフェクトライブラリとともにミュージック面を充実させています。また静止画像についても1枚の画像をもとにパンニングムービーの作成が可能となりました。またこれまでは完全に独立してしまっていたiMovieとiDVDも、書き出し行程を大幅に省略。チャプターメニューもiMovie上で設定したものが直接呼び出し可能になっています。

そのiDVDもバージョンは3へアップデート。オートマティックシーンセレクション機能の実装し、メニューページのバリエーションも拡充。メニュー画面でのムービーの表示位置なども調整可能になっています。このメニュー画面については、かなり力が入ったアップデートが加えられ、「Picture in Picture」や「Brush Strokes」など多彩なメニュー画面が用意されました。この点はJobs氏もお気に入りの模様で、じっくりとデモを行っていました。

iDVDに数多く用意されたメニュー画面のテーマ集。iMovieで拡がった表現手法に負けないメニューが作成可能です。

最近のDVD-Rメディアの価格低下に合わせ、アップル純正DVD-Rディスクも$3(1枚)になり、iMovieでの作品作成を行う方には嬉しい発表も加えられました。

iTunes/iPhoto/iMovieはこれまでフリーダウンロードで利用可能でしたが、これらに関してはこれからもフリーで利用することができ、iDVDについてはこれまで有償扱いとなっていたものを、先の3アプリケーションをバンドルし、「iLife」というiアプリケーションスイートとして49ドルにて提供されることが発表されました。iアプリケーションの有償化は予想されていた点ではありますが、各アプリケーションの大幅な機能強化と連係、適切な価格設定から、こちらも場内から大きな拍手で迎えられました。

iLifeに続き、噂はあったものの、誰もが最も驚かされたのではないかというアップル純正ブラウザ「Safari」がアナウンスされると、場内のテンションは急激に上昇。iアプリと共通性のあるシンプルなインターフェースをまとったSafariの開発にはスピードに重点が置かれたとのこと。HTMLのロードスピードテストではIEの3倍の速度をマークし、JAVAにも高速に対応。起動スピードも大変速くなっており、ブロードバンド時代に待つことに我慢ができなくなりつつあるユーザーの欲求を満たしてくれそうです。

アップル純正ブラウザとしてはCyberDog以来となる「Safari」。

HTMLロードスピードテストではIEに対し3倍の速度をマーク。高速な動作に加え簡単な使い勝手も魅力です。


各プラグイン系も幅広く表現可能とされており、使い勝手の上でもツールバーへのブックマークの登録がドラッグアンドドロップで可能(消す時もドックよろしくツールバーの外にドラッグすれば「ポン」と消えます)。ブックマーク管理はiPhotoやiTunesと同様のインターフェースに。iアプリ流のインターフェースが踏襲され、フォルダ管理が可能なブックマークはSafariのウィンドウ上にリストとしてページとして表示されます。


検索についてはツールバーにgoogleの検索ウィンドウを用意。全く新しいという機能は無いものの、既存ネットブラウザの弱点を洗い直し、Ease of Useを追求したブラウザとして評価できるのではないでしょうか。Beta版ながらキーノート当日よりフリーダウンロードが開始されました。

次もまだアプリケーションが続きますが、こちらもニューフェースとなるプレゼンテーションソフト「Keynote」が紹介されました。ジョブス氏の言葉によれば「Built for me」。実はこのアプリケーション、2002年のサンフランシスコエクスポ以来実際に基調講演にて利用され、ジョブス氏本人によりテストが続けられてきたとのことです。

新アプリケーション「Keynote」は、美しいテキスト&グラフィックスと直感的な操作を実現するプレゼンテーションソフトウェア。デファクトスタンダードとも言えるマイクロソフト社PowerPointに対し、アップル製品らしさを十分に身に付けたこのKeynote、マッキントッシュユーザーのプレゼンテーションには今後かなり活用されそうです。

KeynoteではQuarz Extremeを活かした美しいテキスト表現に加え、アラインメントガイド機能による直感的かつスマートなレイアウト作業を提供。4アルファチャンネルグラフィックスをサポートし、グラフィックに関してはリサイズ、ローテート、テキストとのレイヤー、トランスパレント設定など豊富な表現が可能になっています。

テーブル、グラフ作成もサポートし、こちらも表現手段は多様。作成方法も作成用パレットに値を打ち込み、設定パレットにてアレンジ。位置/サイズ変更にもフレキシブルに対応します。


Blackboard/Letterpress/Pushpin/Sandstone/Notebook他、テーマ集も数多く用意され、テーマの種類によりグラフなどのテクスチャも自動的に設定。スライド切り替え時のトランジッションもクロスフェード、ワイプ、ティルト、アイリス、フリップ、キューブローテート他、美しいエフェクトが用意されました。

プレゼンテーションソフトと言えばまっ先に思い付くのがマイクロソフト社の「PowerPoint」ですが、KeynoteではPowerPointとの連係も配慮され、インポート/エクスポートが可能となっています。エクスポートのフォーマットとしてはPDF/QuickTimeMovieを用意。使い勝手が良く、美しい表示、既存ファイルの再利用といった点からも$99に価格設定されたこのKeynote、日本での発売については未確定のようですが、今後大変楽しみな存在となりました。

Keynote紹介の最後には、キーノート参加者全員に「最初のユーザーになってほしい」とフリーのプレゼントというサプライズも。

ここからハードウェアに話が移ります。2年前SFで発表されたPowerBook G4が取り上げられると、場内の期待が一気に高まりました。アップル社製品におけるデスクトップとノートブックの出荷比率が説明され、2000年には20%で業界標準と同様であったノートブックのシェアが、2001年は35%に上昇、2003年も35%を維持するのではとの説明が。アップルがノートブックにその比重を移していくことが宣言され、ついに17インチPowerBook発表!

登場した新ハードウェア、PowerBook G4 17"を掲げるジョブス氏。

厚みは1インチと既存PowerBook G4と変わらず、1440×900の解像度を誇る17インチ液晶モニタを搭載。照度が落ちると発光するキートップにチタンからアルミ合金性に変更された匡体材質で6.8ポンド(約3.1kg)の重量を実現。搭載されるCPUはモトローラ社PowerPC G4 1GHz/1MB L3キャッシュで、グラフィックチップにはnVidia社「GeFroce 4 440 Go」を採用。I/Oには長らく登場が待たれていたFireWire 800が採用された点にも喝采がわきました。PCカードスロットも1スロットながら残留。ネットワークではついにビルトインのBluetooth/AirPort共存環境が実現しています。

2年前のサンフランシスコで登場したPowerBook G4では匡体材質にチタンが採用されましたが、この17インチもデルではアルミ合金を採用。

これに関し、アップルが提供してきたワイアレスネットワーキングソリューション「AirPort」が紹介され、これまで採用されていた業界規格IEEE-802.11bに代わり、IEEE-802.11gを採用した「AirPort Extreme」が紹介されました。

802.11bは速度的に頭打ち(11Mbs)となっており、それを打破する次世代ネットワークソリューションがAirPort Extremeとなりますが、コンパティビリティーに問題のある802.11aではなく802.11g(ともに54Mbs)を採用したとのこと。すでにAirPortカードを装着したマシンでも、AirPort Extremeネットワークへの参加が可能となっています。

PowerBook G4ではAirMac Extremeがビルトインとなっていますが、これまで弱点の一つであった到達距離も、iBookと同等のレンジを実現。AirPort Extreme Basestationでは50名のアクセスが可能でブリッジにも対応し、BaseStationに用意されたUSBポートにプリンタを接続すれば、ワイアレス環境でのプリンタ共有が可能に。価格も$199とかなり抑えられた設定とされています。

PowerBook G4 17"では新しいリチウム電池とパワーマネージメントで4.5時間の稼働時間を確保。気になる価格ですが3,299ドルに設定され、2月の発売が予定されています。

新しいPowerBook G4に湧いた会場が更に盛り上がったのがスクリーンに写し出された「one more thing」。後から加えられた「little」の文字にiPodや周辺機器系の紹介かと予想しましたが、登場したのは12インチ液晶を採用したPowerBook G4!

広大な作業エリアを持つ17インチに続き登場したのは、12インチ液晶版PowerBook!iBookのコンパクトさとG4のパワーを合わせ持つ魅力的な製品です。

4.6ポンド(約2.1kg)の重量に1024×768解像度の12インチ液晶ディスプレイ。これだけ見ればiBookと大差はないものの、搭載されるプロセッサはモトローラ社製PowerPC G4 867MHz。グラフィックにはnVidia社「GeForce4 420 Go」となり、32MBのビデオメモリでマルチモニタをサポートします。

17"同様、Bluetoothはビルトインですが、AirPort Extremeはオプション扱い。デフォルトとなるコンボドライブ搭載のマシンでは価格は1,799ドルに設定されていますが、BTOでのSuperDriveのコンフィギュレーションも用意されています。

PowerBook G4 12"/PowerBook G4 15"/PowerBook G4 17"/iBook 12"/iBook 14"と幅広く用意されたアップルノートブック製品群。「2003年はノートブックを中心としたラインナップに移行する年に」というジョブス氏の言葉により基調講演は締めくくられました。

詰め掛けた観衆を沸せたジョブス氏による基調講演は、iアプリケーションの統合によるEase to Useと、「2003年はノートブックを中心としたラインナップに移行する年に」というジョブス氏の言葉により締めくくられました。

基調講演終了後、出口では発表されたプレゼンテーションソフト「Keynote」のプレゼントを渡すスタッフが対応に追われていました。

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