ソニーMDR-EX70SL

 

iPod用のイヤーレシーバー、各サイトでも検討事項となっているようですが、ウチではソニー製「MDR-EX70SL」に。シリコン製のイヤーチップを持ち、簡易的ながら密閉型。サイズも小振りでなかなかの装用感です。

イヤーチップ部は取り外しができ、耳のサイズに合わせて交換が可能。う〜む、このイヤーチップ、往年の名機、ソニーTE-ST55/56B系で使えるかも・・・(補聴器ですが、笑)。

音についても十分満足のいく音質で、なにより密閉型のため、マスキングノイズとなる外部騒音の侵入が少なく、電車内でも音を上げずとも楽しむことが可能でした。

一方密閉型ではOcculusion Effectが生じ、250〜500Hz付近の音圧レベルが上昇しますが、歯の接触や顎関節の動き他、自分が発生する音が耳につきやすいという点が。また外部からの音声信号の遮断から、危険察知という面では能力が大きく低下するため、歩行中などの利用は避ける必要があります。

 

「MDR-EX70SL」とiPod標準イヤーレシーバー装用の違いを比べてみました。

左がiPod標準のイヤーレシーバー、右がソニー「MDR-EX70SL」(すいません、ハナから間違ってました・・・)

iPod標準タイプのイヤーレシーバーは直径が少々大きく(アメリカ市場向けか?)耳の小さい方には納まりが悪いケースもありそうです。

またこうしたタイプの一般的なレシーバーでは、耳甲介腔に納めた本体の脱落防止を耳珠と対珠に維持を取るスタイルとなりますが、外耳道方向にドライバの向きを合わせることが難しという弱点が。

また外耳道との空隙が大きくなるため、鼓膜への音の伝達ロスが生じる上、外部の環境音も侵入するため、特に周囲がうるさい環境ではボリューム自体を上げがちに。

iPod標準イヤーレシーバーなど一般のタイプでは本体を耳甲介腔に納め、耳珠と対珠で脱落に対する維持をするスタイルですが、外耳道封鎖に関しては空隙が大きくなるため、鼓膜に伝達される音圧は低下。またドライバ径により耳へのフィットが変化し、サイズが大きいと耳輪脚の隆起に当たり、長時間装用で痛みを伴うことが。

一方「MDR-EX70SL」では外耳道とシリコンイヤチップとの抵抗で維持を得ており、外耳道を密閉するスタイルとなるため、ドライバ径自体は若干小さくなるものの鼓膜への伝達効率は良く、残余外耳道容積の低減と併せ、十分なボリューム感を得ることができます。

外耳道との空隙により減衰しがちな低域がかなり出るようになりますが、これが若干出過ぎるきらいがあり、ブーミーとなる感じが。このあたり、イコライザでいじることができるとなお良し(ベントがあけれればいいのですが)。あまり派手に鳴らさず、ちょっと控えめくらいの音量が適しているように思います。

「MDR-EX70SL」ではイヤーレシーバーの維持を外耳道で行うため、小さな耳の方でもフィットしやすく、また外耳道を密閉するため、鼓膜への効率的な伝達を実現。本体からコードに繋がる部分もシリコン素材を使用し、珠間切痕へもジャストフィットしています。

帯に短し、たすきに長し」、ご指摘の通り、当初バックやズボンのポケットに入れた際は、ちょっと取り回しがやっかいでした。「それならいっそ」と胸のポケットにタバコに代えて入れてみたところ、ジャストサイズで余計な遊びがなく快適。ホイール面を前にして入れておけば、スキップ/一時停止もOKということが判明いたしました(ポケットから取り出して画面を見ながらとなると、やはりちょっと短いのですが・・・)。

  

歩行時のイヤーレシーバーによる音楽鑑賞と危険察知に関しメールをいただき(久保田様、ありがとうございます!)、補聴効果測定器を用い音楽をマスキングノイズとした場合の最小可聴閾値変化を測定してみました。

リオン社補聴効果測定装置「HF-03」。本来は補聴器をした際の効果を確認するために用いる機器ですが、裸耳(装用なし)と、MDR-EX70SL、iPodの演奏時・停止時につき測定を行いました。

本来はスピーカーから1mの距離で測定しますが、高域裸耳の可聴閾値を下げてイヤーレシーバー装着による変化を見るため、2m距離で測定をしてみました。測定音は純音ではなくウォーブルトーンとなっております。

マスキングノイズに選んだのは、どう練習してもああは叩けない(当然か?)Led ZeppelinのGood Times Bad Times。下画像のボリューム位置にて測定を行いました。

なんど聞いても凄すぎるボンゾのドラミングが堪能できるGood Times Bad Times。ボリュームは7分目といったところ。

  250Hz 500Hz 1kHz 2kHz 4kHz
裸耳 40 35 25 20(※) 20(※)
iPod停止 40 35 25 25 20
MDR-EX70SL停止 45 40 40 40 30
iPod演奏 80 70 65 60 65
MDR-EX70SL演奏 90 85 80 75 70

単位:dB SPL ※20dB SPL以下測定不可


測定結果では裸耳と停止時の各イヤーレシーバーの最小可聴閾値比較で、MDR-EX70SLでは1kHz/ 2kHzにおき15dBの上昇が見られるなど、密閉性がある程度現れました(環境音は35〜40dB)。iPod標準イヤーレシーバーでは、高域で若干の上昇が見られるものの、裸耳との差はほとんどない結果に。

演奏時の変化ですが、これは測定をしてみて改めて驚かされましたが、全周波数帯域において、大きな変化が現れました。iPodでは35〜45dB、MDR-EX70SLについては50〜55dB最小可聴閾値が上昇しています。

こうした状態で無意識のまま街中を歩くと、非常に危険です(恐らく取扱説明書などにも注意書きがあるかと思います)。歩行中や自転車・バイク・車の運転中には、イヤーレシーバーの使用は製品を問わず、危険回避のため絶対に避けて下さい。あの方の状態でそのまま外に飛び出すと、車にはねられるなど思わぬ事故に遇うかもしれません。

  

Newton @-AtMark-、杉山様より外耳道密閉とコードの擦過ノイズについてメールを頂戴し(ありがとうございます!)、歩行など移動の際、コードの動きによりかなり低域音が耳につくとのご指摘をいただきました。

MDR-EX70SLは密閉型ということで、Occulusion Effectが顕著となる場合があるようで、自身の発声や顎関節滑走・蝶番・回転運動音、咬合音が外耳道軟質部にて共鳴し、250〜500Hz付近の周波数帯で音圧レベル20〜30dB上昇、コードの擦過音に関しても同様に耳につくことがあるかもしれません。

上記理由から、低音域(ピークは400Hz付近)において、コードだけではなく、歩行時の踵が地面にあたる「ゴッ、ゴッ」という音、声帯からの音(イヤーレシーバーを付け「ウ〜」と言ってみると確認しやすいかと思います)、顎関節や歯の当たる音(こちらはガムやビーフジャーキーを噛んでみると・・・)など、様々な音が耳につく場合が。

こうした音ですが、聞く音楽とボリュームにより、雑音と同一周波数の音圧レベルがそれを越えることでマスキングされるため、ボリュームが上げていくとある一定音量以上では気にならなくなってきます(反対に音をイヤーレシーバーから入れない状態では、最も雑音が気になるかと思います)。

ボリュームや使用スタイルによってはこうした低音域の雑音が耳につきやすい場合があるかと思います。個人的には移動時でも車・バス・飛行機内のように比較的突発的な外部からの危険音声信号が少なく、体の動き/コードの擦過によるノイズ発生リスクも小さい、また環境音による音声のマスキングに対するマージンが得られるという環境にて、今後利用してみようと考えています。

  


大浦様からは同様の密閉型イヤーレシーバーで、音源の忠実な再生を主眼に置いた高級機、Etymotic Research社ER-4S」をお教えいただきました。(ありがとうございます!)調べてみたところ、WAOさんのところで紹介のあったAEDIO様取扱われている模様。価格的にはさすがに手が出せないところですが(笑)、密閉性の向上はMDR-EX70SLにイヤーモールドを製作し、近々試してみたいと思います。

 

MDR-EX70SL用イヤーモールドを試作してみましたが、外耳道長は短かめの方が良好な周波数バランスが得られる模様。

外耳道長を8mm程残した作例では、ゲイン的には上がってくるものの、やはり自声の響きやコードの擦過ノイズが顕著。ドライバの外耳道内の位置はノーマルのイヤチップと大体同じか?

思いきって外耳道をほとんどカットしてみたところ、低域のこもりが薄れ、良好なバランスに。コードの擦過音も控えめになります。

外耳道長短縮版では鼓膜との距離が若干遠くなるものの、十分な音量が得られました。外部環境音の侵入という意味では、ドライバー自体にある程度のベント効果があるため、外耳道部での大きな遮音効果変化は認められませんでした。

外耳道第一カーブまでを密閉することによる低域の過剰ブームのリスクより、耳甲介腔部を封鎖し、外部マスキングノイズを低減させるというアプローチの方が、バランスとしては良い場合があるかも知れません(8mm程度であればバランスが大きく崩れることはありませんでしたので、このあたりは好みの問題かも知れません)。

 

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