更なる快適さ、生体親和性を目指して

高い比強度(同じ重さにした際の強度)を持つコバルトクローム合金は、金属床材料としてスタンダードの地位を獲得しました。口の中で舌が動くスペースが広くとれる、クラスプなど維持装置の小型化と長寿命を実現し、現在でも広く義歯床用材料として用いられています。

木床から数百年の年月を経てコバルトクロームという理想的と思われる材料に辿り着いた有床義歯ですが、更なる進化を目指し、新たな素材の探索が続けられます。その結果、コバルトクロームに対し比強度が更に高く、様々な金属の中でも生体親和性に特に優れるチタンにその目が向けられました。

 

チタンの発見と実用化

チタンの発見は18世紀後半まで遡りますが、工業用としての製法が確立されたのは比較的最近の1940年代。これも精錬方法として確立されたというだけで、金属床の材料になるには、精密鋳造という大きな製作上のハードルを越さねばなりませんでした。

チタンは常温では表面に形成される酸化皮膜のため、酸、アルカリ他に対し高い安定性を示しますが、鋳造といった高温下においては、酸素を多量に吸収し、堅く、脆くなるといった性質を持っています。

酸素との反応を避けるため、チタンを溶解して鋳込む時、空気をアルゴンガスのような不活性ガスに置き換えて鋳造を行う方法が検討され、1980年代より歯科での利用に耐え得る精密鋳造が可能となりました。

 

真空鋳造法下でのアークによるチタン溶解風景。

 

 

さらに進化するチタン床

鋳造に用いられた材料は純粋なチタンに加え、酸化しやすいチタンの鋳造性を改善するチタン合金も広く利用されました。しかし鋳造器、埋没材の改良にともない、単に鋳造を容易にするというだけではなく、コバルトクロームと同等の強度をチタンに与えるために、ニオブと呼ばれる金属を添加した合金が用いられるようになりました。

 

歯科鋳造用・チタン-ニオブ合金

 

現在では総義歯のように広い部分をおおう入れ歯では純チタン、部分床義歯やエステディッククラスプなど、強度を必要とするケースではチタン-ニオブ合金といったように、ニーズに合わせた素材選択を行う時代となっています。

 

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