入れ歯にかかる力

入れ歯にかかる力は「もぐり込む」という方向だけではありません。顎を動かしたり物を噛み砕いたりする時には左右方向にも大きな力がかかります。このため床は口の中に残った凹凸にぴったりと合わせて製作され、頬や舌といった組織の力も借りて水平方向の動きを抑えます。一部歯が残っているときには、この歯にクラスプという金具をかけることで、入れ歯にかかる力を受け止めることができます。

もう一つ入れ歯にかかる力があります。上の顎を考えてみて下さい。下の顎に入れ歯を入れるのであれば、主にこれまでみた「もぐり込む」、「横にずれる」といった力を考えていれば良いのですが、1本も歯が無い上の顎に入れ歯を装着するとなると、重力に逆らわなければなりません。下の顎と同じ床では、装用しても口を開けば下に落ちてしまいます。

 

重力に抵抗する力・吸着力

上の顎の入れ歯が落ちてこないようにいかに固定をするか。歯の土台である床は、動かず安定していることが第一条件。世界中で口に入れ歯を固定する方法が考案されましたが、現在でも使われる「吸着」という方法が生み出されたのは日本でした。

口の中を舌で触ると、上の顎で歯に近い場所は固く、もう少しのどの方に舌を動かすと柔らかい組織になるのが分ります。この部分は厚い柔軟な膜のようになっていますが、ここにぴったりとあった形の床を密着させると、そこの空気が押し出され、ちょうど吸盤のように床が吸着します。

この原理で上の顎にでも落ちることなく入れ歯が装着できるのですが、驚くべきことにこの方法は遠く室町時代頃から実用化していたようです。

 

室町時代、つげの木などかたい木材から削り出された木床義歯が生まれます。単に見た目だけではなく、しっかりと口の中で機能し、また歯の無い口の中に吸着させるという方法がすでに取り入れられていました。

 

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